ホワイトサンズ国立公園

(White Sands NP)

　ニューメキシコ州南部、サンアンドレス(San Andres)山地とサクラメント(Sacramento)山地の挟まれたタラロサ(Tularosa)盆地に広がるホワイトサンズは、その名の通り純白の砂丘が広がっている。白い砂丘は世界各地で見られるが、ほとんどの場所の砂が石英（SiO2）の粒で構成されているのに対し、ここホワイトサンズの砂は細かい石膏（硫酸カルシウム二水和物、CaSO4・2(H2O)）の結晶からできている点で極めて稀少な存在である。
　ここでは約2億5000万年前のペルム期に石膏を豊富に含んだ地層が形成され、その後の造山運動と断層活動により山地と盆地が誕生した。この盆地は流出する河川を持たず、現在より寒冷湿潤だった氷期には広大なオテロ湖が現れ、山地から流入した水に含まれる石膏が沈殿して湖底に集積していった。そして最終氷期が終わった約1万年前、乾燥化が進行するにつれオテロ湖が干上がっていき、ルセロ（Lucero）湖と呼ばれるごく浅い小規模な湖を残して消滅、その後に多量の石膏の層が残った。
　地表に現れた石膏の結晶は非常に柔らかいため容易に破砕されて砂粒となり、卓越する南西風によって北東へと運ばれていき、現在見られる広大な砂丘が形成されたのである。
　石膏自体は特に珍しい鉱物ではないが、可溶性のため湿潤な土地では地下水に溶け込み海へ流出する（温泉に含まれることも多い。）。だが、乾燥した盆地は他に世界各地に存在するのに、なぜ高純度の大規模な石膏砂丘がここタラロサ盆地にだけ分布しているのか、奇跡的で貴重な存在と言える。
　19世紀末頃からこの特異な風景が注目され始め、最寄りの街アラモゴード（Alamogordo）の発展に尽力したチャールズ（Tom Charles）らの活動によって、1933年に579km2の範囲が国立記念物に指定され、環境保護と観光地化が進展したのである。なお、当時は観光の他に石膏採掘も重視されていたため、国立公園ではなく国立記念物の登録を目指したと言われている。
　その後永らく国立記念物として利用されてきたが、周辺の地方政府や政治家の間で国立公園への昇格運動が巻き起こり、2019年に改めて国立公園に指定された。
　ちなみにここは盆地の底であるが、海抜約1200ｍ強と結構な高所にある。

　ただし、国立公園の範囲は石膏砂丘全体の約半分に過ぎず、残りの北半分はホワイトサンズミサイル演習場の一部になっている。人口希薄なニューメキシコ州南西部は非常に広大な土地が第二次大戦を機に軍事施設に収用され、1945年に世界最初の核実験が行われた「トリニティサイト」もホワイトサンズの北約100�qの演習場内にある。
　つまり、ここでは軍の基地内の一部が保護されるようになったわけではなく、自然保護及び観光目的の利用が先で、後から周囲に軍事施設が建設されたわけである。大戦終結後も冷戦下で軍事施設の拡充が急速に進行し、ホワイトサンズも危機に瀕したことがある。園内西側を軍との共同利用地とすることで折合いがつき園内の環境も守られているが、ミサイル訓練の実施時は公園前の国道もろとも閉鎖されてしまう。特に短期旅行でここを訪れる場合、事前にインターネットで閉鎖日時を調べておくことを勧める。

行きやすさ　　★★☆☆☆
感動度　　　　★★★★★
スケール　　　★★★☆☆
ユニークさ　　★★★★★
写真写り　　　★★★★☆
一口コメント：本当に雪みたいに見える透明感のある白さは、言葉も出ない崇高な美しさ。