４日目 （6/19） 雷鳴轟く水煙と南天の星

まだ4時40分というのに眠い眼をこすりつつ、まるで夜逃げのようにホテルを出る。ヨハネス行きの機内で夜明けを迎え、窓からは雲一つない乾いた大地の様子をくまなく眺められて楽しい。所々に鉱山跡らしい穴や、スプリンクラーの半径だけ緑色になった農地等、日本にはない光景が楽しい。
ヨハネスブルクで今度はジンバブエ航空に乗り換えだが、かなりのオンボロの機体とサンドイッチだけの粗末な機内食がいかにもアフリカの飛行機という感じだ。窓の下の風景も平坦で荒れた茶色い大地が果てしなく続いている。ケープタウンで買った地図を取り出して位置を確認するのに熱中。そのうち次第に高度を下げ、突如現れたビクトリアフォールズ空港に無事降り立った。

この空港は、潅木の茂る原野の中にぽつんと滑走路と小規模なターミナルがあるだけの、ほんまに国際空港かいなという感じの所だ。しかも入国審査は添乗員が全員分のパスポートを役人に渡して通過するというのどかさ。しかも一人の荷物が来ないというおまけ付き。
迎えの車で一旦ホテルに入り、昼食をかきこんでからいよいよこのツアーの観光のメイン、世界遺産のビクトリアの滝へ向かう。「シューッ」という水音が「ドゴォォー！」という轟音に変るとともに現れたそれは、日本の滝のイメージとは全く違うものだった。雨期明けで増水した茶色いザンベジ川が、視野に収まりきらない幅で白い水煙と化して流れ落ち、はね返る飛沫がスコールのように対岸の我々に降り注いでくる。とても言葉にならない豪快な眺めだ。ちょうど滝の正面に虹がかかり一層自然の神秘さを演出している。

滝見物の後は、オプショナルツアーだが、私は申し込んでいなかったので一足先にホテルに戻る。今晩泊るエレファントヒルズは五つ星の高級ホテルで、広大な敷地にはジムやゴルフ場も点在していて、いかにも西欧人がゆったりとバカンスの贅沢な時間を過ごす場所という雰囲気である。

そう言えば、ビクトリアの滝では満月の夜には月の光で虹がかかるという。さぞかし神秘的な光景だろうが、日食を見に来ているのに満月にめぐり合えるわけがない。その代わり、月のない光害と無縁の夜空はかくも暗いものか、降るような星空がとても美しい。見上げればオレンジ色の火星がギラギラと、傍らのアンタレスを嘲笑うように光芒を放っている。日本では低くしか上ってこないω星団も、空高く、はっきりした存在感をもって輝いている。