朝、目覚めて外を見ると、晴れて日差しがある！天気がとても心配だったので、本当に安心した。出発前に調べたCNNの天気予報では日曜が曇時々晴、月曜が晴だったが、見事当たっている。晴れたらこっちのもの、ゆっくり仕度して8時過ぎにチェックアウト。ホテルを出ると昨日のチャン氏が待ち構えていた。今日は大荷物があるためバイクは無理だと言ったが、彼は大丈夫だというジェスチャーをした。どうやって大きなリュックを運ぶのかと見守ると、器用に体の前で車体に挟んで固定し、平然として出発した。ベトナムのバイクはみんな大量の積荷を載せて走っているので、彼も普段からたくさん荷物を抱えて運転するのに慣れているのだろう。
　今日は飛行機の出発まで少し時間があるので、まず市街のはずれにあるタップ・ドイへ。ここはこの地区の遺跡には珍しく、入場料2000ドンがかかる。その分公園のようにきちんと整備されており、管理人が二人、花に水をやったりしている。澄んだ青空の下、朝のさわやかな空気がとても気持ちいい。隣が学校なので、児童の歓声が聞こえてきてとても賑やかだ。
　敷地内に現存する二基の四角い塔のうち、一つはきれいに修復されている。中にも入ることができるが、屋根の頂上は抜け落ちて青空が見えている。もう一つは屋根に草が生えるなど荒れたままである。

　9時になったのでタップドイを出発し、昨日曇っていて不満が残った銀塔へリベンジ。蝶が舞う開けた坂道を登り、馬の鞍のようなユニークな屋根をした宝物庫、複雑な形状の屋根を持つひときわ大きな主祠堂など、それぞれに個性的な造形の遺跡を上機嫌で堪能する。視線を遠くへ移せば広々とした田園地帯や道路、青く霞む山地の眺めもよい。昨日と大違いで、やっぱり晴れていると何もかもきれいに見える。好天に心から感謝。

　遺跡めぐりの最後に北の金塔に行こうと思ったが、さんざん尋ね回ったあげく近くまで来てみれば、バイクで行くことができず、延々と丘を徒歩で登らなければ場所にあった。到底飛行機に間に合わなくなるので、遠方から写真を撮るだけで引き揚げ。クイニョン−ダナン間の便が週三便などではなく最低一日一便ぐらいあれば、クイニョンに連泊してもっとゆっくり回れたのだが、仕方がない。
　これでチャンパ遺跡めぐりは終了。金塔から空港は近いとの予想通り、20分ほどで着く。一期一会、クイニョンの街とチャン氏よ、さようなら･･･。
　クイニョンからダナンへの便も昨日と同じATR72で、満員。定員64人のうち、外国人は私を入れて3〜4人だけ。今回は窓側の席だったので、下の地形が良くわかって退屈しない。だいたいまっすぐな海岸が続いているが、時々山が海側へ出張っている所もある。そして川は幅が広くて蛇行が激しく、河口の所で大きく広がって湖状になっているのが多い。飛行時間は1時間足らずゆえ、景色を見ているとすぐダナン(Da Nang)に着いた。

　ダナンも天気がよく、暑い。疲れたので一服していると、英語を話すバイタクドライバーにつかまる。とりあえず市街の端にある旅行会社に行きたかったので、乗ることにする。ダナンはクイニョンよりずいぶん大きい街だが、車はまだまだ少なく、バイクだらけだ。交差点ではピーピー鳴らしながら好き勝手に、しかし要領よく走っている。どの道にも街路樹が植わっていて、小笠原でもおなじみのモモタマナが特に多い。
　ところが、目指す旅行会社の番地は、跡形もない更地。一体どうなっているのか？止むを得ずもう一軒載っていたVITOURで降ろしてもらう。ここのお姉さんは一年習っただけにしてはずいぶん日本語がうまく、今晩のホテル、明日午後フエ行きツーリストバス(4$)の他、きれいな笑顔につられて明日半日のホイアン行きの車の手配を頼んだ。これは自動車のチャーターになり、25$とべらぼうに高いが、もともの時間の都合で行程からはずしたホイアンに行けるので、迷ったあげく申し込んだのであった。

　ときに15時前、先ほど旅行会社で予約した中級ホテル、サイゴンツーランに入る。一泊34$。そして荷物を置いたら早速街歩きを開始。天気がよいのは大いに結構だが、昨日よりずっと暑いので、疲れてのどが渇くのが玉に瑕。
　川沿いの道に出ると、プロムナードが整備されていて、バイクの洪水のような他の道より歩きやすいうえ、川風が心地いい。ただし、道行く人々がじろじろ見てくるうえ、子供や若者は冷やかしで声をかけてくるのがうっとうしい。山奥の未開人でもあるまいし、ベトナム第三の都市で外国人を見たことない者などいないだろうに。ボッタクリよりこちらの方が腹が立つ。こんな風習は早く改めてほしいものだ。

　目指すチャム彫刻博物館は古風な黄色い建物で、有名なミーソンの他、クアンナム・クアンガイ・ビンディン等、各省の遺跡からの石像や塔の装飾・台座等が、無造作にポンポン置かれ、ガラスの仕切り等遮る物は何もない。間近に、自由に見る角度を変えて彫刻を満喫できる。また、国内各地のチャンパ遺跡の現状と調査結果のパネルもあり、いくつか日本語も併記しているものがある。
　街中の喧騒と無縁に歴史ロマンに浸れることもあり、見ていて飽きることがない。入館料は20000ドンだがそれ以上の価値が絶対にある。現地の遺跡は今や器だけ、そこに元々入っていた宝石がここに一同に会しているというべき所で、ベトナムに来たら必見の博物館だと思う。

　博物館を出てようやく食べる時間ができたので、まずダナン名物のミークアンの専門店に入る。麺は伊勢うどんに似た太くて黄色いもので、やわらかくてのど越しがいい。具は揚げた小エビ、赤身の豚肉に葉っぱが載っている。汁はフォーのようにたくさん入れず、底に少したまる程度で、麺にからめて食べる。あっさりしてなかなかうまい。値段は10000ドン。
　しかしこれだけでは夕食に足りず、暗くなってから腹が減ったのでホテル近くを物色していたところ、一軒の大衆食堂が目についた。陳列のおかずを選んで、ご飯に載せて食べる気軽な店。骨付豚肉と野菜入りの卵焼きで6000ドン。良心的な値段だ。この店でも外国人は注目の的、何とか会話集の本と、英語を話す娘さんのおかげで少し話ができた。

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