■ イエローストーン・アーティストポイントからキャニオンを望む
天気が気になって朝早く目覚め、カーテンを開けると雲一つない最高の青空が広がっている。イエローストーン最後の日に何とか晴れてくれて、心底ほっとする。外は放射冷却によりぐんと冷え込んで、8月というのに車には霜が着いている。
早速7時にチェックアウトし、車で一路北を目指す。太陽が上がってくるにつれ、透明度の高い青空の色が濃さを増し、期待でハンドルを握る手にも力が入る。朝早いうちはまだ道もよくすいていて、他車を気にせずマイペースで走れる。特に、図体がでかくてのろいキャンピングカーがいないのが有難い。
キャニオンビレッジの手前で右折し、キャニオンカントリーの由来であるイエローストーン大峡谷を目指す。峡谷の両側に展望台がいくつか設置され、車道も通っているが、ノースリム側が工事中のためサウスリムしか選択肢がなく、車道の一番奥にあるアーティストポイント(Artist
Point)に車を停める。
峡谷に向かって張り出した自然の見晴台からは、薄黄色のごつごつした岩肌が深く切れ込んだスケールの大きな峡谷の眺めがよく、上流にはダムの放流のような大きくて力強い滝の姿が目を捉える。絶妙の配置は一幅の風景画を見ているようで、現実離れした荘厳な眺めに言葉も出ずしばしたたずむ。
それから少し戻った所にあるアンクルトムズトレイルを歩く。初めはリスを見ながら松林の中を行く緩やかな散策路だが、途中から断崖に取り付けられた鉄製の階段を降りてゆくことになる。この階段、踏板が網目状なので足下がよく見えるうえにとても急なので、一段一段恐々降りていく。
しかし、終点のポイントは滝に近すぎず遠すぎず、ちょうどその勇壮な姿全体が見られるベストな場所に設置されている。白いしぶきが轟音をたてて落下するその水量の何と豊かなことか。そしてこの滝は何段にも分かれているのではなく、100ｍ近い落差を一気に落ちているのが素晴らしい。
こちらも飽きない眺めだが、朝食の時間が10時までなので引き上げる。調子に乗って早足で上っていくと、すぐに息が切れてしまう。ここが標高2300ｍ以上あることを改めて思い出し、息を整えながらゆっくり歩いて車に戻る。サウスリムには8:20から9:30過ぎまで一時間強の滞在であった。
カフェテリアには終了15分前に着いたので朝食に間に合う。昨日と似たようなベーグルの朝食を摂り、食後は元来た道をレイク方面に戻る。
途中のヘイデンバレーでは広大な草原にたくさんのバイソンが草を食んでおり、遠くから見ると茶色い点が動いているようである。
その先はレイクから流れ出た川の渓流にさしかかる。自然のままの清流は川幅一杯にさらさら流れ、両岸の松林の濃い緑と空の色を映した水の青、白いしぶきの対比が目に鮮やかで、心が洗われるような清らかな風景だ。
30分かけて宿泊地の近くのウエストサムに戻ってくる。ここはイエローストーン湖の西岸、湖畔に間欠泉が密集しているのを見られる場所である。現在定期的な噴出こそないものの、個性的なものが多く、細長い形で色のグラデーションが見られるシーズモグラフ(Seismograph)プール、黒味がかった青色のアビス(Abyss)プールなど独特の色をした美しい池もある。
また、広い湖自体も透明度が高く、岸から沖へ向かうにつれて微妙に変化する湖水の色が素晴らしい。
ここを出たのが13:30、朝の寒さがうそのように暑くなったが、相変わらず雲一つない快晴で空気も乾燥している。
当初の計画では、一昨日と昨日でイエローストーン観光を終え、今日は南隣のグランドティートンにでも寄りつつゆっくり南下するつもりであった。しかし、昨日夕方まで曇ったのでその分今日に持ち越す羽目になってしまい、グランドティートンはあきらめることとしたのである。
とは言え、明朝ソルトレイクシティ(Salt Lake City)空港でレンタカーを返却する予定は変えられないので、明朝慌てなくていいように今日中に少なくともユタ州には入っておきたい。もうあまり余裕がないのだが、昨日曇って楽しめなかったガイザーカントリーの北側だけはもう一度見たいので寄り道する。
まずサファイア(Sapphire)プールの空を映して真っ青に透き通った熱水に見とれた後、少し先にあるイエローストーン最大のグランドプリズマティック(Grand
Prismatic)スプリングを見に行く。ただしこれはあまりに巨大すぎて空からでもないとその全貌が捉えられず、トレイルからはほとんど見えないのが残念。むしろその横にあるオパール(Opal)プールやターコイズ(Turqoise)プールの澄んだうす青色が印象的である。
これを最後に、名残惜しさと今日の晴天への感謝の気持ち一杯でイエローストーンを出る。できるだけ明るいうちに走りたいので、16時にウエストイエローストーンで給油した後はひたすら走り続ける。
ウエストイエローストーンを過ぎるとすぐアイダホ州に入る。そして急坂で山地から平地へ一気に下りてからは牧場が広がる盆地を南下。結構人工物が多くてあまり楽しくない道だが、片側二車線になって走りやすいのは助かる。
アイダホフォールズ(Idaho Falls)でインターステートI-15に入り、ここからは時速75マイルに加速して、西日が照らす中を急ぐ。岩山に囲まれたポカテロ(Pocatello)の先で高い段丘を一気に急勾配で登った後は、低い山に挟まれた幅広い谷間の縁をえんえんと走って、ユタ州に突入。アイダホ州には悪いが、一度も下車せず、1セントも使わず単に通過しただけというわけである。
州境を越えたあたりでほとんど日が沈んでしまい、暗くなってからはもう走りたくないので、20:20頃、初めに現れたブリガムシティ(Brigham City)という所でインターステートを下り、モーテルを探す。少し走った先で見つけたクリスタルインというモーテルは、やや高級な宿のようで一泊$84の部屋しか空いていなかったが、疲労が激しく探し回る気力もないので泊まることに。
荷物を部屋に放り込んだ後、近くのショッピングセンターにあったサブウェイに入り、腹が減っていたのでフルサイズのサンドイッチをテイクアウト。
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