■ イエローストーンのモーニンググローリープール
昨日の長時間運転の疲れもあり、8:30頃までゆっくり寝る。モーテルの簡易な食堂でトーストとコーンフレークの朝食を食べた後、9時に出発。
コディの街を出るとすぐに山地に分け入っていく。朝からイエローストーンを目指す車が多く、追い越し車線のない道路で前の遅い車にいらつきながら走る。日本より運転マナーがいいと言っても、やはり混んでいる道は楽しくない。
次第に谷を詰めていくにつれ、前方に雲が増えてきて、イエローストーン(Yellowstone)国立公園のゲートまで来ると一面のベタ曇りになる。もともと天気予報で想定していたことだし、今日一日ぐらいは天気が悪くても仕方がない。寒冷前線が通過するまでの辛抱だと思う。
ゲートの先の峠を越えると、急カーブの連続で一気に下り、行く手に広々したイエローストーン湖が現れる。雄大な湖を眺めるため、湖畔の駐車スペースに停めて一休み。
南西の風がかなり強く、雲を映して灰色をした湖面に白波が立っている。寒々しい光景だが、実際にかなり寒く、あわてて上着を羽織る。こんな天気では写真は期待できず、寒さしのぎも兼ねて、しばらく走った所にあるレイクカントリーのビジターセンターを見学。
広大なイエローストーンにはビジターセンターが何ヶ所もあり、各館で展示内容が分かれているが、ここは湖周辺に棲息する鳥類に関する展示がメインであった。
次は、とりあえずイエローストーン最大の見所、間欠泉の宝庫オールドフェイスフルに向かう。途中の道路は二度分水界を通過。つまり、大西洋側から太平洋側に入ったと思うとすぐまた大西洋側に戻るというわけだが、周囲は一面松林に覆われた高原状の地形で、険しい山越えは見られない。
レイクから約30分でオールドフェイスフル(Old Faithful)に到着。駐車場は広く、何百台も停められる大規模なもの。宿が三軒に店もあり、まるで都会みたいに賑わっているが、観光地だけに、道行く人たちの表情は和やかだ。
オールドフェイスフル一帯は小さな盆地になっているためか、周囲の山の上には雲が連なっているが、ここの上はきれいな青空が広がっている。本当に嬉しい。気をよくして散策路の奥にあるモーニンググローリー(Morning
Glory)プールを目指す。
快適に歩ける木道沿いには、グロットガイザー・グランドガイザーといった有名かつ大規模な間欠泉の他、小さな熱水の池がいくつもあり、青空を映している透明なもの、鉄分を含んで茶色をしたもの、既に涸れて穴だけになったものなど多様性に富んでいる。
30分ほどで柵に囲まれたモーニンググローリーに到着。バクテリアの繁殖具合と深さによって、端の茶色から中心部の濃い青緑まで色の変化が鮮やかで美しい。ただし、欲を言えば池から立ち上る湯気が少し邪魔なのと、横から覗き込むため斜めにしか見えないのが惜しい。
戻る途中の分岐から別のルートをとってみると、キャッスル(Castle)ガイザーの周りに人だかりができている。噴出予報の掲示は13:50〜15:50頃とあり、今は14:30なので私も待つことにする。何もせず待機している間は半信半疑だったが、15時を回ってからようやく始まると、白い堆積物で形成されたドームから湯気とともに勢い良く熱水が吹き上がり、自然の驚異に迫力を感じる。噴出は思ったより長時間続き、強弱を繰り返しながら15分以上吹き上げ続けた。
たまたま間欠泉の噴出を見ることができた幸運に満足して、駐車場に戻る。
続いてオールドフェイスフルガイザーに向かう。さすがにイエローストーンの顔というべき存在だけあって、間欠泉の周りをぐるっと取り巻くように席が設けられ、たくさんの観客が待ち構えている。掲示時刻から約5分遅れ、16:15になっていよいよ水煙を垂直に吹き上げ始め、一斉に歓声が沸き起こる。
しかし、そんな時に限って大きな雲が頭上にかかってしまい、しかもこの間欠泉は噴出規模が大きい代わりに継続時間が短いようで、何とか日差しが戻ったときにはかなり水勢が弱まってからであった。
さて、もう夕方になってしまった。夕食と飲み水の購入も必要だ。少し足を伸ばしてゲートを出たところにあるウェストイエローストーン(West Yellowstone)に行くことにする。隣接しているとはいえ広大な園内を抜けるだけでも相当な距離がある。しかもオールドフェイスフルの噴出を見届けて一斉に引き上げる車で交通量がやたら多く、うっとうしい。
西口へは、ミズーリ川の源流に沿って緩い峡谷を下る。蛇行する川はゆったりと流れ、青空の色を反射して青い。護岸や砂防ダムに荒らされず、ごみ一つ落ちていない自然のままの川はこんなに美しいのかと感動する。
やがて峡谷を離れて出口を過ぎたと思ったらいきなりウェストイエローストーンの街が現れる。通りの両側には西部劇風の木造が並び、観光地特有の華やかさがある街だ。ここのスーパーで飲み物を購入。
しかし、いざ夕食と思ってもふらっと入れる店が見当たらない。一人には敷居の高いレストランばかり。不本意だが唯一見つけたマクドナルドに入る。
マクドを出たのは19時、太陽はかなり西の空低く傾いてきた。ゲートで今日買ったチケットを見せて入場し、宿を目指す。こんな時間から入ってくる車はほとんどなく、対向車線をひっきりなしに通る車に優越感を持ちながら快走。
今日から二泊、レイクカントリーにあるグラントロッジを予約している。アメリカの国立公園内の宿は非常に人気が高く、四ヶ月以上前からすでに他の宿は全滅、唯一空きがあったこのグラントロッジも前日までは満室続きで、ようやくこの日から空きが出たためそれに合わせてこの旅行の日程を組んだほどなのだ。
二階建てのモーテル風の建物四棟並ぶこのロッジ、国立公園なので豪華さは求めないが、見かけのわりに粗末な造りで、上からの足音がよく響くのが欠点だ。
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