■ ブラジリア・テレビ塔からの眺め
昨夜は睡眠中に突然ふくらはぎのこむら返りに襲われたり、寝る前にジュースをがぶ飲みしたせいで尿意を催したりで、度々目が覚めたが3:30頃からようやく安眠できた。そしてはっと気が付いて時計を見たら7:15になっていた。
あわてて飛び起きて荷造りを済ませ、食堂へ急行して簡単なバフェイの朝食を取る。目の奥の痛みは引いたが、首の凝りと腹の張りのせいで食欲がない。それでも栄養補給のため無理して少し食べてから、8:20みホテルをチェックアウト。
時間に余裕がないので、いつ来るかわからないうえ時間もかかるバスに乗るわけにいかず、ホテル前に停まっているタクシーに乗り込んで空港へ。車窓から見るサンパウロ市街は思ったより起伏が大きく、高層ビルもたくさん建っているので立体的な感じに見える。ただし、ビルはかなり年期が入ったものが多く、どこかに何かしら落書きがされていてあまり見栄えがいいものではない。
日曜の朝ゆえ交通量の多くない道路を、タクシーは次々車を追い抜きながら飛ばし、30分ほどでグアルーリョス空港に到着、料金は105レアルであった。
空港ターミナル内は大混雑。特に国内線のカウンターには長蛇の列ができている。国内移動なのに、大型段ボールを始めやたら大荷物を持った客が多く、軽装客の多い日本の国内線との大違いにびっくりした。荷物が多い分手続きに時間がかかるのか、なかなか列が進まず、出発一時間半前に着いたのに、チェックインできたのは35分前であった。余裕を見て来たのに、荷物を預けた後はのんびり一休みする間もなく搭乗口へ向かう。
ゴル航空ブラジリア行きは定刻より少し遅れて9:30に出発。機材は小型のB737-700だが、ほとんど満員。
快晴のサン・パウロから北上するにつれ、群れを成したような同じ形の雲が現れるようになり、12:00にブラジリア（Brasilia）へ着いたら雲量が50%ぐらいまで増えていた。
空港からホテル地区へは8レアルのバスを利用。ちょうど12:30発のバスが発車するところだったので運よく待たずに乗れた。
空港を出たバスは広い道を走って都心へ向かい、角を曲がるといきなり国立博物館と大聖堂の前衛的な姿が車窓に飛び込んでくる。そしてその先、二本の細い塔の両側に上向きの皿と伏せた皿を置いた形の国会議事堂の所でUターン、緑地帯を挟んで幅200mはあるやたら広い道路を通ってホテル地区へ向かう。路線バスながら観光バスみたいにこの街のハイライトを一通り見られた形になり、得をした気分な半面、少々あっけない出会いになったしまった感もある。やはり有名建築物は、自分の足で一歩ずつ近づいていき、次第にその全貌が明らかになってくるのがその醍醐味だと思うからだ。
ホテル地区には名前の通り箱型のやや年代がかった高層ホテルが集中していて、いかにも計画都市という雰囲気がする。そのうちの一軒、メルキュール・ブラジリア・リデアに投宿。フロントの若い男は以前日本に来たことがあると言い、大阪から来たと聞いて「タコヤキ、オコノミヤキ、グッド」と言ってくれた。
予約していた部屋は白を基調とした清潔で機能的なもので、ベランダもあって風を入れると気持ちいい。まだまだ体調が本調子と言えないので一時間ほど休息する。
ホテル前の道路は異様に広く、一本の道路というより公園の両側に二本の一方通行路があるという方が適切な感じである。その公園内には噴水とテレビ塔があり、鉄骨を組み立てたテレビ塔は東京タワーみたいに裾が広がっていないので、細くて頼りなそうな感じがする。
塔には展望台があって無料のエレベーターで上れるが、日曜日だからか家族連れが長い列を成している。一旦エレベーターが定員になって閉まると、上まで上がって帰りの客を乗せて戻ってくるまで列が進まないので、時間がかかって仕方ない。30分ほど待ってようやく自分の番が回ってきた。
展望台は塔全体の約三分の一の高さでしかないが、それでもなかなかの眺めで、並んだ甲斐がある。西の方には公園と大通り、その左右に建ち並ぶホテルが見え、突き当りには国会議事堂の白い建物が存在感を放つ。そしてその背後には人造湖の水面と地平線が広がっている。こうして見ると何もない高原に一から都市を建設したのが実感できる。とにかく何もかもスケールが大きく、ちょっと大味すぎて実際には使いにくいような感じだ。帰りも行きと同じく列に並び、所要40秒のエレベーターで地上に下りる。
塔から下りたのが16時前、暗くなる前に行動を終えるため、そろそろ明日のバスの切符を買いに長距離バスターミナルへ向かおうと近くのバス停で待つ。ところが、ガイドブックに書かれた108.5番というのが待っても一向にやって来ない。しびれを切らし、五分ほど歩いて市バスターミナルへ行ってみても、路線図や時刻表のような気の利いたものが見当たらず、旅行者にとっては不親切極まりない。ここで30分ぐらい待っても来ないので係員に尋ねると、ポルトガル語なので全くわからないが、どうやら108.8というバスに乗ればいいらしく、17:10になってやっと目当てのバスに乗れたのである。
市バスは前乗り後降りだが、変わっているのは運転手に運賃を払うのではなく、少し奥の車掌席で払ってから回転バーを押して客室内に入るシステム。ワンマン化しないのは雇用確保の意味があるのか、それとも治安上の問題で二人乗務としているのか。
ガイドブックによると長距離バスターミナルはメインストリートの西端、旧鉄道駅にあるはずなのだが、動き出したバスは住宅街を一路南へ走り出した。どこへ行くのか、本当にこのバスで合っているのか不安になったが、郊外のニュータウンらしきビル群が見えてきた所で停車した。結局いつの間にかバスターミナルが移転していたわけで、道理でいつまで経っても元のバスが来なかったわけだ。
しかも、横を見るとメトロの駅が隣接している。移転先を知っていればメトロに乗って楽々と来られたのに…。情報が古いせいで一時間以上時間を無駄にしてしまった。
長距離バスターミナルは意外と混んでおらず、明日の夜21:00発のベロ・オリゾンチ行きの切符が買えた。料金は138レアルと税1.5レアル。
帰りはメトロに乗る。運賃は2レアルで、四輛編成の電車は車輛相互の行き来ができない不便かつ危ない造り。ターミナル最寄りのショッピング（英語そのままだが、ポルトガル語に定着した単語らしい。）駅の次駅から地下に入り、七駅15分でセントラル駅に到着。時刻は18:10になり、日没が過ぎてだんだん暗くなってきた。夜景でも撮ろうかとも考えたが、今からホテルへ三脚を取りに戻っている間に完全に暗くなって夜景のベストタイムを逃しそうなので、諦め夕食にする。
ホテルの裏に大きなショッピングセンターがあるので入ってみると、思った通り立派なフードコートがある。買い物客で賑わうフードコートには20軒ぐらいの店があり、迷ったがちゃんとした物を食べようと流行ってそうなグリルの店で注文。卵付きハンバーグとライス、それに黒豆の煮込みセットが9.8レアル。ハンバーグはおいしいが、豆はぜんざいを塩辛くしたみたいな味で口に合わず、最後はコーラでむりやり胃に流し込んだ。キューバで食べたものと似ていて、あの時はキューバは社会主義国だからこんなまずい物を食べているのかと思ったが、どうやらラテンアメリカに共通する料理のようだ。
それから飲み物を調達しようと店内を探し回るが、日本のこういう施設では中核的存在である食品スーパーがここでは見つからない。二〜三周しても発見できず、ホテルに帰りフロントで訊いて出直してみると、服と日用品の店の片隅に申し訳程度に飲料と菓子が置かれているのが見つかった。昨日のサン・パウロでもそうだったが、飲み物や食料品が買える店が本当に少ない。ブラジル人は喉が渇かないのかと思うほどだ。
念願の飲み物を入手してから部屋に帰り、髭剃りと入浴を済ませたら21時を回ってしまった。その後旅行記を書いたり本を読んだりしてくつろぎ、0時前に就寝。
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