１日目　2015.1.3 （土）

　今年度の冬期旅行は、東南アジアの未訪問国のうちからラオスに行くことにした。そして関空から直行便のないラオス、どうせバンコク経由になるなら単純に飛行機で往復するだけでは芸がない。タイへ行くとなると日本で絶滅寸前の客車列車にぜひ乗りたいので、バンコクから国境手前のノーンカイまで夜行列車で北上、バンコクへの戻りは時間を惜しんでタイ国内線で移動することに決めた。満員で寝台券を入手できない恐れもあったため、ネットで見つけたタイの日系旅行社で鉄道と飛行機のチケットを事前に購入して準備万端で臨んだのである。
　ただし、関空−バンコク間の航空券は、正月休みのピークをずらしたものの直行便の安いチケットが取れず、時間がかかる香港経由になってしまった。そのため、上本町6:30発という早い時間のバスに乗って関空へ向かわなければならない。日の出の遅いこの時期、ようやく空が明るくなり始めたところで、走っている間に東の空がだんだん黄色く光り出してきた。

　関空に着いたのは7:20、三が日の最終日ゆえ帰国してくる人が多いのか、出発ホールはの方はあまり混んでいない。出国手続きを済ませゲートへ早めに着いたところ、待っている客はとても少なく、この便は空いているのかと思いきや、搭乗時間間際になって急にわらわらと出現してきて、要領の良い客が多いのに驚いた。
　結局ほぼ満席になり、キャセイパシフィックの香港行きA330は定刻9:30に出発。私の席はまたしても主翼の上。国際線に乗ると八割方主翼の中心から三〜四列内にされる。個人旅行のディスカウントチケットはこの場所に割り当てられるようになっているのか？
　機内食でチキンを選んだら、鶏肉の煮込みを乗せたご飯が出た。ご飯にかかるソースはカレーみたいに見えるのにカレーの辛さがなく、代わりに塩味と甘味がやたらきつい奇妙な味付けであった。
　機内サービスには定評のあるCX、座席モニターは日本語含む多言語に対応し、選べる内容も多岐にわたる。飛行時間が短いので音楽でも聞こうと「J-POP」を選択したところ、定番歌手に混じって何と声優のアルバムが二つも入っている。具体的な選曲は各国の社員に任せているのかも知れないが、外国の航空会社にまで声優が浸透しているのに少し驚く。折角なので、最近家でやっていたゲームの好演に敬意を表して今井麻美の曲を聴いてみた。

　香港は雲がほとんどなく晴れ渡っている。ただし空気はかなり埃っぽく、空港からほんの数kmにある低い山々が霞んでよく見えない。中国本土のPM2.5がこんな南まで流れてきているのか。
　空港での乗継ぎ待ちは、一人だとしゃべって時間をつぶすこともできず、ひたすらボケーっと座っているだけなので本当に退屈。しかも、所定の時刻が来ても一向に搭乗が始まる様子がない。おかしいと思い始めた頃にアナウンスが流れ、出発は50分遅れて15:15に変更とのこと。さらに、搭乗口も歩いて五分もかかる遠い場所へこっそり変更され、げんなりした気分になる。さすがにCXのスタッフも悪いと思ったのか、搭乗時にドリンクが配られた。結局さらにもう10分遅れ、実際に出発したのは15:25になった。
　バンコク行きの機材はA340、より新しい機体だが先ほどのA330に比べて内装が安っぽく見える。そして、今度もやっぱり席は主翼の真上。
　香港では埃っぽいとは言え一応晴れていたのに、海南島上空辺りから雲が増え、バンコクまで来ても空の半分ぐらい雲に覆われている。高度を下げると海岸沿いの低地にエビ養殖池らしい池が一面に広がっている光景が見え、一旦海上に出てから急反転してバンコク（Bangkok）・スワンナプーム空港に着陸。この空港はやたら広いため、着陸してからターミナルまでのタキシングにやたら時間がかかる。

　入国審査は何も訊かれずすぐ済んだ。その先で両替するが、何と1バーツが4円もする。本当に円は安くなってしまったものだ…。
　荷物も割と早く出てきたのですぐに地下の空港鉄道の駅へ移動。18:00発の電車に乗り込む。電車は三輛編成と短いのに利用者は結構多く、そのせいで混んでいる。それにロングシートなので乗り心地はあまり良くない。客はタイ人より外国人の方が多く、40バーツというタイの物価水準では高額な運賃がタイ人には不評なのか。
　この国唯一と言っていい国際水準の高速鉄道はずっと高架を走るので、眺めがいい。地平線まで続くまっすぐな低地に工場や新興住宅が建ち並んでいて、発展中の国らしい風景が広がっている。バンコク中心部へ向けて次第に建物の密度が増してくるが、土地の利用はかなり粗放的で残っている緑も多い。
　電車に乗っているうちに日没を迎え、30分でホテル最寄りのラチャプラロープに到着。

　駅前の広い道へ出てすぐ先の辻を東へ入ると、予約しているタンゴ・バイブラント・リビング・プレイスという長くてわかりにくい名前のホテルに着く。部屋で荷物を降ろしてちょっとだけ休憩し、19時過ぎになって夕食を摂りに出かける。ガイドブックを見ると北へ10分ぐらい歩いたところにバミー（タイ風ラーメン）の店を見つけたので、楽しみにしながら目指す。ところが現地へ着いても全然見当たらず、どうやら閉店してしまったようでがっかり。それほど腹が減っていなかったこともあり、急に食欲が失せてしまったため少し周囲を散歩してからホテルへ戻ることにする。
　周りはとても賑やかで、たくさんの人々がそぞろ歩いている。白人ツーリストの姿も目立ち、やはりバンコクの旅行者人気は相変わらずだと思わされる。また、街角の至る所にコンビニ（セブンイレブンとファミリーマート）が建っていて、100ｍに一軒は必ずある。おかげで外国ではよく苦労する飲物の調達も、ここでは困らずに済むのはとても有難い。

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