８日目 2011.8.6（土）
ホテルで朝食を食べ、7:30過ぎに出発。駅前に泊まったおかげで、重い荷物を背負って移動せずにすむのがいい。
すぐ駅に着くと、構内には最新式の液晶画面による案内表示があり、予約している7:55発ワルシャワ行きは「1」と出ていた。昨日通路壁に掲示の時刻表を調べたら5番ホームと書かれていたが、ヨーロッパではよく発車ホームの変更があると聞いていたし、随時更新可能な画面の方が正しいだろうと信じて1番ホームに上がっていくが、なかなか列車がやって来ない。ただし、ホームには結構乗客の姿があり、みんな大きな荷物を持って長距離列車に乗るような感じなので、単に遅れているのだろうと思って彼らに混じって待った。
ところが、定刻を20分過ぎても列車が来る様子もなく、液晶画面からその列車が消えたので、いやな予感がしてホームにいた警備員に切符を見せて訪ねる。英語が通じないので言っている意味が分からなかったが、「ペロン・ペーチ」の一言だけ理解でき、同時に顔から血の気が引くのが自分でも分かった。5番ホームで合っていたのだ！あわてて5番ホームへ走るも、当然後の祭り…。何たる失態か！単に列車に乗り遅れただけなら大したことないが、このせいでワルシャワから乗る帰りの飛行機に間に合わなくなってしまったのである。それにしても今回は画面の表示ミス（よく見てみたら全部の列車のホームが「1」となっていた）に加えて、1番ホームが空港行きの乗場のため大荷物の客が多く紛らわしかったこと、さらに工事の囲いのせいで5番ホームが見通せなかったことと、不運が重なってしまった。
さて、でたらめな表示をしやがって、と液晶板に悪態をついてもどうしようもない。全くの自業自得だ。あと残された手段は、国内線でワルシャワへ飛ぶのみ、落ち込んでいる暇もなくタクシーで空港に向かう。
空港に着いたのは9:30少し前。とりあえず国内線のポーランド航空窓口で当たってみたものの、無情にもワルシャワ行きは夕方の便しか空きがないとの宣告、これで予定通りに帰れないことが確定した。
今は悲しいとか腹が立つというよりも、何とかしなければという思いが全てである。空港を後にし、敷地のはずれにある停留所みたいに簡素な駅から、ちょうど停まっていたトラムそっくりの低床気動車に乗ってまた本駅へ戻ってきた。
念のために売店でテレフォンカードを買って、航空券を手配した旅行会社へ国際電話をかけてみたが、思ったとおり自費で帰りの航空券を買うしかないとのこと。どちらにせよワルシャワへ行かないといけないので、窓口で11時過ぎに出る次の列車の切符に替えてもらってホームで待つ。
今度の列車は当初乗る予定だったICと違い、日本語に訳すと「格安急行」という変な種別。その名のとおり安いのか、客は学生風の若者が多く、私のコンパートメントも留学生か寝袋持参のバックパッカーばかり。
列車が動き出すと、これまでのやり取りで疲れきったからか寝てしまい、目が覚めたら人気のない田園地帯を走っていた。この路線、実はヨーロッパ最初の「高速新線」らしいのだが、元は貨物用に建設されたため人里はなれた田舎を通り、新線といってもTGVやICEのような専用の超高速車両があるわけでもないので、速達効果は少なく地味な存在である。
今日は昨日のような快晴と違い、朝から雲が多めで、途中からにわか雨が降り出してきた。雨避けで窓を閉めると非冷房で満員の車内は蒸し暑くてたまらず、止んだら窓を開けて涼を取り、降ったら閉めるのを繰り返して面倒くさい。
14:30頃、急に家やビルが増えたと思ったら、ほどなくワルシャワ(Warszawa)中央駅に到着した。
地下駅のワルシャワ中央に降り立ち、まずは帰国の航空券を買いに行かなければならない。観光客の多い所なら航空券を扱う旅行会社があるはずだと、市バスで旧市街へ向かったものの、探し回っても航空券を買えそうな旅行会社がない。これが東南アジアあたりの観光地なら、ツーリスト目当てのそういった店が嫌でも目に入ってくるのだが。
らちが明かないので、結局空港へ行くことにする。バスで駅前を過ぎ、南へ転じて街外れにある空港で下車。
ターミナルビルに入ると、運よくフィンランド航空のカウンターに男性係員がいた。彼に乗り遅れた旨を話し、日本までの航空券を買い直したいことを告げると、驚いた風もなく淡々と端末を操作し、明日のヘルシンキ経由関空行きを発券してくれた。料金は3300ズウォティだが、金額のことなど構っていられない。とにかくよかった、これで一日遅れで帰国できると胸をなで下ろした。
今日ワルシャワに泊まる必要が出てきたので、駅のインフォメーションを訪ねる。係員の女性がなぜか強く勧めるホテルは既に満員、二軒目のところを予約してもらう。
紹介されたホテルは駅と旧市街の間にあるので歩いていく。ワルシャワは第二次大戦で徹底的に破壊されたので、ホテル周辺は、戦後建てられた灰色の箱型ビルばかりのくすんだ街並みが広がっている。少し紙くずなども散乱しており、治安の悪さを感じるほどではないけれど、うらぶれた感じが強い。
その北側には、戦後、生存した市民の記憶や絵画までを総動員して、壁のひびまで復元したと言われる旧市街が広がっている。ここはやはりたくさんの観光客で賑わっている。赤い屋根と壁の王宮、旧市街広場に面したカラフルなバロックの商店などどの建物もきれいに保たれ、市民の心意気を感じる。予定外の滞在となったワルシャワ、どうせならついでに写真を撮りまくりたいところだが、昨日でちょうどフィルムを使い切ったうえ、デジカメも変換プラグを壊してしまったせいで充電できず、水曜の夜に電池切れで使えなくなったので撮りようがない。
あまり遅くならない間に散策を終えて、都会らしく駅前の地下街で夕食を摂ってからホテルに戻る。今頃飛行機に乗っていたはずだったのにと思いながらテレビを見て、就寝。ポーランドにも「警察24時」みたいな番組をやっていてちょっと驚いた。
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