サン・ペドロ・デ・ラ・ロカ城(San Pedro de la Roca)

モロ要塞の名でも知られるサン・ペドロ・デ・ラ・ロカ（San Pedro de la Roca）城はサンティアゴ・デ・クーバ市街の南郊外、湾の入口の東側に建設された城塞である。切り立った崖を利用したこの城塞は上下四層に分かれた立体的な構造で、最上層にシタデルと呼ばれる主要建造物がある。 　海賊の脅威からサンティアゴ・デ・クーバを防衛するため、17世紀前半に著名なイタリア人築城家アントネッリ（Battista Antonelli,1547-1616）の設計を基に着工され、完成を見たのは1700年であった。その建設中にイギリスの海賊によって占領・破壊された経験もあり、完成後も18世紀を通じて何度か補強がなされている。 　1898年の米西戦争時にもアメリカ軍の攻撃に備えた城塞として使われたが、その後は次第に朽ちていった。それが修復されたのが1960年代のことで、カリブ海に残るスペインの城塞として最も保存状態が良好なものとして世界文化遺産に登録されたのである。 　 （2012.2 撮影、D） 撮影ガイド　：　城内は概ね東から西へ向かって進んでいくので、午前中の方が光線状態がよい。

城塞の各層には海へ向かって張り出した稜堡が設けられ、様々な角度、異なる高さからサンティアゴ湾とカリブ海を眺められる。また、あちこちに古い大砲が置かれているが、ほとんどが錆びた砲身が転がっているだけのものである。ただし、復元されたらしいまともな大砲も何門か展示されている。 （2012.2 撮影、上はD）

観光客にとってのサン・ペドロ・デ・ラ・ロカ城は、もちろん歴史遺産として見ごたえがあるが、それと同じかそれ以上にサンティアゴ湾とカリブ海を眺める展望台としての価値が高いと言っても過言ではない。 　湾口を扼する要衝に築かれた城塞からは、奥深くまで続く湾と入り組んだ海岸線、その背後に横たわるシエラ・マエストラ山脈がまるで風景画のような構図で展開する。（ただし、市街地手前にある工場の煙突だけは無粋に思える。）西の正面に視線を転じれば、白波打ち寄せる自然のままの美しい海岸と緑の林が見渡す限り続いているのが見渡せる。 　真っ青なカリブ海から吹いてくる風に吹かれながら絶景に見とれていると、時間が経つのも忘れそうになってくる。 （2012. 2撮影） 撮影ガイド　：　この城塞は湾口の東側にあり、西へ向かって眺望が開けている。従って、夕陽を見るのでない限り午前中の方が光線状態が良い。午前中の訪問を強く勧める。

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