■ リオ・デ・ジャネイロのシンボル、キリストの巨像
昨夜はこの旅行で一番よく眠れた。そのおかげで7時に元気よく起床、長時間のフライトに備え朝にシャワーを浴びる。それから少し旅行記を書いて、8時から特筆すべきメニューのない朝食を済ます。
チェックアウトの際フロントで大荷物を預かってもらってから大通りに出て、地下鉄（運賃は3.1レアル）でホテル近くのグロリア駅からセントラルへ。地下鉄駅はわりと新しくて清潔、電車はそんなに混んでいない。そしてセントラルで地下鉄に隣接する鉄道駅を見に行く。この駅はブラジルの鉄道が活況だった時代の面影を残すターミナルということで訪ねてみたのだが、確かに巨大な建物ながら、高い塔がある他は個性の乏しい箱型のビルで、ヨーロッパ各国のターミナル駅みたいな古さもなく肩透かしに終わった。
その後は旧市街であるセントロを散策。チラデンチス宮殿や市立劇場等、観光名所になっているいくつかの建物は重厚で風格があるが、それら以外の建物は比較的新しい。高層ビルも意外と多いので折角の名建築が日蔭になってしまったりと、いい写真は撮れそうになかった。それに、排水も悪いのか、ところどころ道端にドブが溜まっていて少し歩きにくい。
それから西へ向かい、カリオカ水道橋を見に行く。古代ローマのものを模した白亜の二段コンクリートアーチが連続し、上には水道ではなく線路が通っている。かなり大規模な橋なので電車が動いていればとても見ごたえがあるだろうが、あいにく運行休止になってしまっている。しかも太陽が動いて半逆光になり、アーチの白さが目立たなくなってしまった。セントラルの駅舎が大したことないのがわかっていれば、先にここへ来て順光の間に撮影できていたのだが。
次に北隣のカテドラルへ。頂部を切り取った円錐形の、バカデカい砂山みたいな灰色の建物は、教会というより体育館かコンサートホールみたいに見える。教会の中は東西南北に縦長のステンドグラスが設置され、ステンドグラスを通して照射される外光がカラフルである。伝統ある教会と違って撮影可能なのが有難いが、暗すぎて三脚なしでは撮りづらい。
カテドラルを出たら12時、そろそろコルコバードの丘へ行くべく、タクシーを拾って登山電車の乗場へ駆け付ける。ところが、何と登山電車は三時間以上待ちで、買えた切符は16:00発。まさかこれほど登山電車が大人気で待たされるとは夢にも思わず、普通に乗場へ行って次の電車に乗れると思ったのだが。こういう情報こそガイドブックに載せて旅行者の注意を促しておくのが筋だろう。
電車で丘の頂上に登り、そこから市街と海岸のパノラマ、それに名物キリスト像を撮ってすぐ下山し、海側のポン・ジ・アスーカルへ急行して日没を眺める予定だったのだが、おかげで完全に計画が狂った。
仕方がないので、ポン・ジ・アスーカルへ行くのは諦め、待ち時間に海岸から眺めるだけにしてバス（2.85レアル）でボタフォゴ海岸へ向かう。ヨットが浮かぶ小さな湾からは、対岸にラグビーボールを立てたみたいな奇峰ポン・ジ・アスーカルと、それを寝かしたようなウルカの丘が眺められてなかなかの奇観だ。ただし、海沿いで湿気があるためか、晴れていてもちょっと霞んで見える。しかも、14時近くになると少し風が出てきて、西の方を見ると海から吹き上がる風で雲が山に湧き始めている。コルコバードの丘のキリストは今のところ見えているが、いやな予感がする。本当なら今頃、丘からリオの海岸美を堪能して下りにかかっている所なのに…。
あまり時間がないので急いでバスに乗り、登山電車乗場へ戻って改札に並ぶ。そして16時に発車した電車は森林に覆われた山腹を、ところどころ別荘か何かの邸宅を見ながらぐねぐね上っていく。すると案の定、山頂駅近くまで来ると、周りが霧に覆われてしまった。山頂駅から大勢の乗客に混じって階段を上がり、頂上に来ても一面真っ白で下界は全く見えない。もっと早く来られていれば霧もでておらず絶景を楽しめたと思うと、電車の混雑を知らず三時間待ちを喰らったことが実に悔しい。ポン・ジ・アスーカルを含めいつかリベンジしたいと思うが、なにぶん南米は遠い。それにこの大陸には他に行きたい見どころがいっぱいある。果たして生きているうちに再訪できるだろうか。
リオ・デ・ジャネイロの象徴であるキリスト像はやはり大人気で、足下ではたくさんの観光客が、悪条件にもかかわらず入れ替わり立ち替わり記念撮影に興じている。私も折角ここまで来たらせめてこの像だけでも撮っておこうと、霧が少し晴れた時に、人が写らない腰から上だけすかさず撮影し、駅へ戻って下り待ちの行列に加わる。そして18時発の電車に乗って下山、乗っているうちにだんだん暗くなってきて、麓の駅からバスに乗ってホテルに戻ってきた時には完全に暗くなっていた。
預けた荷物を受け取ってホテルを出たら、もう19時を回っていた。サン・パウロ行きの飛行機の時間まであまり余裕がないので、急いでタクシーに乗りガレオン空港へ向かう。海岸の高架道路を快走する車内、ドライバーがかけたラジオからは「ボンフィンデセマーナ」（「よい週末を」）の挨拶が聞こえてきた。今は金曜の夜、週末を前にリオの人々はウキウキしているところだろうが、私はこれから週末をまるまるつぶして日本まで帰らなければならない。時差の関係で帰路は往路以上に時間を食い、サン・パウロを土曜の未明3時前に出ても関空に着くのは日曜日の夕方17時過ぎ、二回にわたるしんどい長時間フライトを思うと気が滅入ってくるのであった。
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